COLUMN COLLECTION | 連載コラム

射界 政治や経済、文化、歴史など、幅広い分野から現代社会に一石を投じる。様々な問題が生じる現代をどう生きるべきか、鋭い観点から示唆・提言します。

 俗語に「日にち薬」というのがある。嫌な出来事や解決に程遠い交渉事などは、ある程度の時間を置くことで抱いていた嫌悪感などが次第に薄れ、困難と思われていた懸案が意外にあっさりと解決するなど、その効果のほどを評して使われる言葉だ。欧米でも同じ意味の言葉として「時間とは、記憶の吸い取り紙」がある。

 ▲時間とは不思議なものだ。未来がやってくる速度と、過去が去っていく速度とは本来、全く同じ速さであるはずなのに人々の頭の中では同じではない。憧れのサーカス団を待ちわびる時間の進み具合は遅いが、終わって移動する素早さに虚しい空間と熱狂の余韻を残すだけの感じ方と同じ。「時はゆっくりと過ぎ、速やかに去っていく」と言った米国の作家ベン・ヘクトの言葉が思い出される。

 ▲東日本大震災で被災し大津波に翻弄されて避難した人々や、原発事故で放射能汚染にさらされて避退を余儀なくされた人々の心情を思うとき、政府や関係機関、東電などの対応の遅さに苛立ちを感じるが、ここでも時間が大事な役目を持つ。同じことをやるにしてもタイミングの妙というのがあって、いたずらに無駄な時間を消費すれば、その効果は薄らいでいくのは自明の理だ。

 ▲同じく米国の作家ウィリアム・フォークナーの言葉に「時が止まるとき、時間は生き返る」とある。時計は個性のない均質の時間を刻み続ける。被災された人々の時計は、風雪に耐えながら築き上げた人生の時間を一瞬にして止め、その瞬間から全く異質の新しい時間を刻み始めている。願わくば少しでも、被災された人々と同質の時間を共有したいと思う。それが一体感を形成する。

2011年5月27日 15:24

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