COLUMN COLLECTION | 連載コラム

射界 政治や経済、文化、歴史など、幅広い分野から現代社会に一石を投じる。様々な問題が生じる現代をどう生きるべきか、鋭い観点から示唆・提言します。

 グルメブームである。ラーメンやカレーライスに始まって高級なフランス料理や和食の店まで、人々はおいしい味を求めて街を往く。若者向きの店には行列ができ、それがまた人気を呼んで、さらに列が長くなる。人づてに「おいしい店」と聞き、その店を訪れるが、なるほどと納得できる店と評判倒れのレストランがある。

 ▲そんな中で思い出すのが「味は体験である。なにが辛(から)いかを、自ら嘗(な)めて、みずから知ることである」という鈴木大拙(禅の研究で知られる思想家、文化勲章受章)の言葉だ。世にグルメ本は数多く、巧みに料理の味わいを綴る名文が書き連ねられているが、実際にそれを食べてみないと本当の味は分からない。文章だけでおいしいと感じても所詮、それは頭の中でしかない。

 ▲この言葉で、大拙が言いたかったのは「やってみなけりゃ、分からない」ということではなかろうか。料理の味に託して、どんな事も人には好みがあって一様ではなく、料理は実際に味わってこそ分かるものである。味わうことなく、いたずらに好き嫌いを判断するのは早計では...の思いが秘められているという。悲しいかな人は物質的な肉体でしか感得できず、全ては経験から始まると説く。

 ▲大拙の敬愛する白隠和尚(江戸中期に活躍した臨済宗中興の祖)が、古寺に降り積もる雪の音を吟じた和歌を引用し、雪の降り積もる音を聞き取る境地に至るには、白隠和尚と同じ悟りに至って初めて分かる。そこには、いたずらに心ない風評に惑わされる愚を戒めている。自らの舌を信じてまず味わい、そのうえで美味かどうか自力を信じて味わうべきと教えている。何事も経験である。

2017年4月21日 13:45

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