COLUMN COLLECTION | 連載コラム

経営コンサルタントの現場報告

物流専門のコンサルティングを手がける㈱シーエムオーの代表取締役・川﨑依邦氏が、
実際に体験した労務問題を報告。取り組み内容などを詳しく紹介します。

昭和24年、広島市で生まれる。早稲田大学卒業後、民間会社で人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。㈱日本経営から昭和63年に独立開業、平成2年法人設立。「物流経営研究会」を組織。物流業界でオンリーワンの経営コンサルタント会社を目指す。
シーエムオー 川﨑依邦 代表取締役
お問い合わせは http://www.cmo-co.com

経営再生物語(163)トップのコミュニケーション〈事例A〉

〈カリスマ的支配〉

リーダーの役割は、メンバー一人ひとりの能力を引き出し、やる気にさせていくところにある。教育とはエデュケートということで、「引き出す」という意味がある。一人ひとりの可能性を引き出し、やる気にさせて自信を持たせていくことである。

 A社(社員数100人)は、成長している物流会社である。リーダーであるトップの力量がすごい。トップは中学卒で50歳。創業するまでは職を転々とし、一時はヤクザ渡世に身を染めたこともあるという。30歳で現在の事業を興した。奥さんとの二人三脚での出発である。トップの回りには5人の幹部がいる。5人の幹部全員、大卒ではない。独身者が3人いる。いずれも、トップとともに歩んできたメンバーである。

 A君(40歳)は入社15年、独身である。実によく働く。会社の事業体制は、1年365日、24時間対応という物流サービス内容である。A君は午前1時出勤して、午後8時退社が、通常ベースである。「よく続きますね」と言うと、ニッコリしている。会社の中が人生そのままの生活の場となっている。

 B君(42歳)も独身で、A君とペアを組んで仕事をしている。日曜日も交代して出勤している。年間稼働日数は330日、1日の平均労働時間は15時間、年間で約5000時間というペースである。あとのC君D君、E君は営業所のリーダーとして仕事をしている。普通の人の2倍は軽く働いている。年間で4000時間である。

 事務関係(給与計算、経理、売上管理など)は奥さん1人が担当している。間接人件費は奥さんとパートの女子1人。従って、奥さんもよく働く。1年365日、24時間体制である。こうしたハードワークに耐え抜くメンバーを、どうしてリーダーであるトップは育成、獲得できたのであろうか。どこにノウハウがあるのか。それは、次の点である。

 ◎カリスマ性

 カリスマとは、「奇跡をほどこし、予言を行う神賦の資質。カリスマ的資質をもつものと、それに帰依するものとの結合をマックス・ウェーバーはカリスマ的支配と呼び、支配類型の1つとした」(「広辞苑」)とある。

 トップにはカリスマ性があり、5人の幹部はそれに帰依している。一種の教祖と信者の関係である。最近はそれほどでもなくなったが、鉄拳制裁、ビシッと殴ることもあると言う。かつてのヤクザ渡世の名残りというか、怖い面があるのである。今でもその筋の大物とは、友人として親交があると言う。いろんなトラブルでも、即解決してくれそうな雰囲気があるのである。

 かつて、ある幹部がいたが、突然姿を消した。辞めさせてほしいと言えば、トップが怖いので、黙って姿を消したのであろう、と推察されている。

 カリスマ的支配の特徴である。付いていけなくなったら、消えるしかないのである。労働基準法のワクとは関係のない、トップとの信頼関係とかカリスマ的支配とかの世界である。

     (つづく)

2017年7月20日 16:58

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