COLUMN COLLECTION | 連載コラム

経営コンサルタントの現場報告

物流専門のコンサルティングを手がける㈱シーエムオーの代表取締役・川﨑依邦氏が、
実際に体験した労務問題を報告。取り組み内容などを詳しく紹介します。

昭和24年、広島市で生まれる。早稲田大学卒業後、民間会社で人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。㈱日本経営から昭和63年に独立開業、平成2年法人設立。「物流経営研究会」を組織。物流業界でオンリーワンの経営コンサルタント会社を目指す。
シーエムオー 川﨑依邦 代表取締役
お問い合わせは http://www.cmo-co.com

経営再生物語(164)トップコミュニケーション〈事例A〉

〈心開かせる気配り名人〉

5人の幹部は必死である。A君、B君は独身なので、通常はコンビニ弁当が食事パターンである。「よく続きますね」と問うと、「仕事は趣味です。そう思って働いています。社長を裏切りたくないのです。社長に付いていくだけです」。A君、B君はお金の管理まで、トップに任せている。お金の管理とは、生活費を除いて、給料のすべてを託していることである。トップは預金通帳を保管している――というわけである。全身全霊での信頼関係である。カリスマ的としか言いようがない。

 ◎共感性

 トップは優しい。よく声を掛ける。絶妙としか言いようがない。相手の気持ちを読み取る能力がすごい。気配り名人と言うべきか。A君、B君は独身なので、食事を心配して、よく一緒に食事をする。営業所のリーダーにもよく声をかける。とにかく、グルグル現場を回る。よく気が付く。ほんのちょっとしたことでも、ピンとくる。察しがいいのである。恐いけど優しい。一人ひとりが「社長は自分のことを気にかけてくれている」と心から思っている。

 年末の12月は、特に忙しくなる。A君、B君は家にすら帰れなくなる。文字通りの一日24時間の勤務が続く。社長は心からコミュニケーションをする。演技ではない。自分で熱いお茶を入れて一人ひとりに配る。「大丈夫か。一月になったら一杯飲もう」とか、「手伝うことがあったら、何でも言ってくれよ。何でも手伝うよ」とか、「これで元気を出せ。マムシドリンクは体に効くぞ」とか......。

 相手の心を開かせていく力がすごいとしか、言いようがない。

 トップは勉強は好きではなかったが、中学校の先生が言ったことを心に刻んでる。それは創業して10年目、苦労の連続で「もうやめよう。もうやめよう」と思い悩んでいたとき、中学校の先生に会いにいって、教えてもらった言葉である。  「いい先生というのは、子供にとって『頼りになるもの、信頼できるもの』―――というイメージを与えているよ。先生に対して、子供がそういった信頼というイメージを持つと、必ず安定感が生じ、自信を持ち心のゆとりを持って、伸び伸びしてくるものだよ。経営者も一緒ではないですか。子供に自信を持たせていくことが、先生の役割です。毎日毎日が大切ですよ。一つ成功すれば子供と一緒に喜び、失敗すれば励ましていく。そして、人間としての暖かさと人間としての深い知恵とか力とか、なくしてはなりません。そうすれば、子供は安心し切って学習し、自分の力を作り出し、自力を付け、自信を持っていくようになります」 トップは中学校の先生の言葉から、共感性を学んだといえる。

           (つづく)

2017年8月 3日 14:03

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