COLUMN COLLECTION | 連載コラム

経営コンサルタントの現場報告

物流専門のコンサルティングを手がける㈱シーエムオーの代表取締役・川﨑依邦氏が、
実際に体験した労務問題を報告。取り組み内容などを詳しく紹介します。

昭和24年、広島市で生まれる。早稲田大学卒業後、民間会社で人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。㈱日本経営から昭和63年に独立開業、平成2年法人設立。「物流経営研究会」を組織。物流業界でオンリーワンの経営コンサルタント会社を目指す。
シーエムオー 川﨑依邦 代表取締役
お問い合わせは http://www.cmo-co.com

経営再生物語(169)情と非情のバランスシート〈事例A〉

〈中小企業の取り柄〉

30周年の記念パーティーで社員に感謝の涙を見せている社長を見ると、本当は情のある人だと思ってしまう。しかし、ここまでの歩みは非情にならざるを得ない局面もあった。情と非情のバランスである。中堅中小企業の経営者にとっては、このバランスが肝要である。A社長を見ていて、つくづく悟らされる。情だけが先行すると、会社は甘くなり、なあなあになり、だらけてくる。非情オンリーでいくと、ぎすぎすし、ピリピリし、金の切れ目が縁の切れ目となる。さらに言えば、中堅中小企業にとっては、情のウエイトが非情より大きい。

 「厳しくやかましく言っているけど、おやじは助けてくれる。何とかしてくれる」。この温かさが中堅中小企業の取り柄である。

 極論すれば、学歴がなくても親がいようといまいと、少々能力が落ちても「あいさつ」と「うそを言わない」(誠実) ―これさえ、しっかり肝に命じていれば、おやじから捨てられることはない。いわば、深いところでの安心感、信頼感こそ、情と非情のバランスの要と言えよう。

 A社長はそっと、お金を社員に握らせる。「死んだらいつでも眠られる」と言って働きにいかせた運転者が、やっとのことで仕事を終えて会社に戻ってくる。ふらふらである。A社長は彼の帰りをじっと待っていた。A社長も必死である。  「ご苦労さん。よくやった」と一言褒めて肩を抱く。そして「取っとけ」と言って、お金を1万円握らせる。絶妙の間合いである。まるでドラマを見ているようだ。

 運転者の顔が輝く。情と非情のバランスの輝きである。目に見えないバランスシートの真骨頂。バランスシートは、右側と左側がバランスしている。A社長を見てみると、どうも深いところでは情が重い。目に見えないバランスシートを支えるものは安心感、信頼感ということになる。含み益とでも言えよう。

 A社長のバランスシートは、やはり情が重い。

                   (つづく)

2017年9月 7日 12:01

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