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常態化するコンプライアンス違反 特殊車両通行許可制度

【行政処分】
2017年9月 8日 12:16
 道路には、走行できる車両の制限値が設けられており、その制限値を超える車両は原則として通行できない。そのため、そうした制限値を超える車両が通行する場合は、道路管理者の許可が必要となる。これが特殊車両通行許可制度だ。同制度は本来、申請して許可を取得して初めて通行が可能となるものだ。しかし現在、申請から許可が下りるまで、かなりの時間を要しているため、許可が下りる前に通行する、あるいは許可を取得せずに通行するというコンプライアンス違反が常態化してしまっている。事業者からは、「いつ下りるかわからない許可を待っていたら仕事にならない」という本音が聞かれ、法令順守には、許可取得の迅速化と荷主の協力が不可欠との指摘もある。道路管理者である行政サイドも、そうした業界の問題を把握しており、今後、荷主への責任の分担を求めていく可能性も示唆している。

 「5月に申請したが、審査開始まで1か月半かかると言われた。再三問い合わせをしたが、回答がないまま、申請から3か月が経った8月になって、ようやく審査開始の連絡が入った」とし、「こんな状態だと、まず仕事にならない」とこぼす九州の事業者。同社社長によると、モーダルシフトや環境対策から、新門司港の利用が多くなっているが、許可申請で時間が掛かるため、結果として、コンプライアンス違反が常態化しているという。そのため、「現場では、環境にいい輸送に切り替えようとしても、それがコンプライアンス違反につながるという矛盾が生じている」と指摘する。

 一方、愛知県の事業者も、「特殊車両を持つ多くの事業者が許可が下りる前に走っている」とした上で、「許可が下りていないから運べないとは、決して荷主には言えないのが実情」と、苦しい胸の内を明かす。また、東京の事業者では、「コスト面で負担は大きい」としながらも、同社が輸送する可能性のある全てのルートで、あらかじめ許可を取得するという動きをみせている。「コンプライアンス違反をなくし、荷主との信頼関係を構築する」という目的だが、それでも、突発的に出た仕事や、許可を取得していたルートとは違う道を、急きょ走るケースがあるなど、完全に守ることは不可能だと指摘する。

 通行許可取得までに時間を要することが最大のネックとなっており、「許可取得を待っていたら仕事にならない」というのが事業者の本音だ。そのため、「申請中に通行する」「申請せずに通行する」といったコンプライアンス違反が常態化してしまっている。また、ルートによって申請から許可までの時間が違うことから、早く許可が下りるルートで許可を取得し、実際には違うルートを走るというケースも出ているという。

 このままでは、通行許可制度自体の信頼性を損なう事態になりかねないといえるが、道路管理者側もそうした問題を把握しており、問題解消に向けた取り組みに着手している。国土交通省道路局道路交通管理課の中川敏正企画専門官によると、通行許可取得までに時間を要している要因の一つには、許可を下ろす道路管理者の一本化が図れていないことにあるという。例えば、国が管理する道路と地方自治体が管理する道路に経路がまたがる場合、審査には両者の協議が必要となる。つまり、国が審査し、自治体でも審査をするという作業が生じる。この審査に時間が掛かり、許可取得までに時間が掛かってしまうというのだ。

 そのため、国交省では現在、データベース化の作業に取り組んでおり、審査の一本化を進めている。中川専門官によると、2020年までに平均審査日数を、現在の約1か月から10日間程度まで短縮することを目指しているという。さらに、同省では、コンプライアンス違反が常態化している問題について、現状では運送事業者だけの取り組みでは解決が困難ということに理解を示しており、今後、荷主への責任分担も視野に入れていくとしている。

 8月22日に行われた社会資本整備審議会道路分科会で、「取り締まり時の違反者への荷主情報の聴取や、荷主に関与した特車申請で、トラック事業者のみならず、荷主にも責任とコストを分担させることを検討する必要がある」とし、荷主への責任追及の可能性も視野に取り組んでいくことが決まった。道路管理者が荷主責任を追及することは難しいだけに、どこまで踏み込めるかは未知数だが、可能となれば実効力は確実に伴うだけに期待も集まる。

 申請から許可取得まで時間が掛かる理由には、道路管理者の一本化だけでなく、ETC割引に絡む車限令の罰則強化が進み、許可申請が相次いでいることも要因として指摘されており、一刻も早い環境整備が求められている。正直者がばかを見ないよう、行政は経済活動に鑑みて、こうした問題の解消を進め、事業者がしっかりとコンプライアンスを守れる環境を整えること、そして業界は、コンプライアンス違反を許さない環境を自ら作っていくこと、そこに問題解決の糸口が見えてくるといえるのかもしれない。

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